大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした
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『ゴメンね』とはどういう意味だろうかと詩織が考えているうちに、彩絵は瞬の義母とともに奥へ進んでいった。
「詩織ちゃん、ここにいて。なんか様子がおかしいよ。なんであの人がおばさんと一緒に病室に行くんだ?」
詩織ではなく彩絵が瞬の病室に行くのかと、拓斗は不満げだ。
拓斗自身、この場にいる人は詩織と瞬の関係を知らないのだからと諦めかけた。
だが瞬はまだ麻酔で眠っていてなにも話せないだろうに、彩絵が恋人のような扱いを受けている。
拓斗は彩絵たちの跡を追うようにして、長い廊下を奥に向かって進んで行った。
だが、途中で秘書だと名乗った男性から止められた。
「ここからはご家族だけと決められております」
「なんとかおばさんかおじさんと話しをさせてもらえませんか?」
「では、確認してまいりますからしばらくお待ちください」
秘書が奥の部屋へと入っていく。拓斗は呆然と見送るばかりだ。
残された詩織は、もう自分がここで待つ意味はないと思っていた。
「詩織ちゃん、なにかの間違いだ。瞬さえ麻酔から覚めたらきっと」
「拓斗さん、もういいわ」