大嫌いと言われた元カレに再会したら、息子ごと溺愛が待っていました
「いらっしゃいませ、犬飼様」
「彼女に似合いそうな服や靴、バッグ一式全部持ってきてくれないか?」
「かしこまりました。お連れ様は退屈でしょう? よろしければ、ジュースでも飲んで待っていますか?」
「秀也、どうする? 俺は寧子の服を選ぶけど、べつの部屋でジュースを飲んで待っていてもいいぞ」
「いいの?」
「うるさくしないようにね」

至れり尽くせりだ。私は頷き、スタッフと別室に行く秀也を見送った。

扉は開けておいてくれたようで、飲み物片手に楽しそうにテレビを観る秀也の姿がこちらからも見える。

その間にも、大量の服が目の前のラックにかけられていく。ゼロが一つも二つも違うブランド品になど触れたことのない私からすると、手に取るのも恐ろしい。

「全部いいな」
「汚したらって思うと着られないって」
「汚したらクリーニングに出せばいいだろ」
「クリーニング代だけで、ファストファッションブランドなら一枚くらい買えちゃうでしょ!」
「あ~買えるかもな」

一枚千円のTシャツなんて着たこともないくせに、と目で訴えると、私が言いたいことが伝わったのか拓也が喉奧でくっと笑った。

「高校生のころ二人でおそろいのTシャツ買ったろ? 一枚千五百円のだっけ。まだ持ってるぞ?」
「雨に降られて着替えたとき? 傘を買った方が安かったのに、拓也が譲らないからTシャツ買ったのよね。懐かしいね、私もまだ持ってる」
「結局、傘は売り切れてただろ?」
「そうなんだけど」
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