大嫌いと言われた元カレに再会したら、息子ごと溺愛が待っていました
第一章

「田神《たがみ》さん、一階のロビーに派遣の人が来てるって!」
「ありがとうございます。ちょっと抜けますね」

私は派遣会社の呼び出しを受けて、一階へ下りる。
非正規雇用のため楽とは言いがたい生活だが、一人息子の子育てをしつつ働くのも十年目ともなれば慣れてくる。お母さんの協力なしには、秀也《しゅうや》をここまで育てられなかっただろう。

「お待たせいたしました」

ロビーに下りると、派遣会社のコーディネーターである岩波《いわなみ》さんがどこかぎこちない笑顔で頭を下げてきた。彼女の顔にぴんとくる。あまりいい話ではなさそうだ。

「契約の更新の件で伺いました」
「はい」

岩波さんは一呼吸置いて、申し訳なさそうに続けた。

「会社側は契約を更新しないそうです。……お力になれず、申し訳ありません」
「いえ、岩波さんのせいじゃないですから」

契約社員、正社員として人材を雇用するのを嫌う会社も多い。なにか問題があってもすぐに解雇とはいかないからだ。よほど会社に重用されていればべつだろうが、高卒の私程度の人材など掃いて捨てるほどいるのだろう。
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