大嫌いと言われた元カレに再会したら、息子ごと溺愛が待っていました

 拓也と再会してから一年が経った。

 両開きのドアが開き、パイプオルガンの音色が響く中、ウェディングドレスに身を包んだ私はバージンロードを拓也と歩いた。

 母の隣に立っている秀也は、結婚式がどういうものかいまいちよくわかっていないのか、楽しそうに私に向かって手を振っていた。

 ほっとしたように笑みを浮かべる母に目を向ける。秀也の父親について打ち明けた日のことを思い出す。

 再会し交際が始まってすぐに、拓也は私の実家に挨拶に来た。
 その際、彼は、土下座せんばかりの勢いで仏壇の前で頭を伏せ、母にも私と秀也のそばにいてくれたことへの感謝を述べた。

 母は複雑そうな顔で事情を聞いていた。
 どうやら、私が拓也と付きあっていたのは知っていたらしい。
 実家に住んでいた高校の頃、拓也とよく電話をしていた。私の口から何度も「拓也」と男の名前が出たのを聞いて、誰が秀也の父親なのかすぐに見当がついたようだ。

 ただ、私が頑なに相手の名前を言おうとしなかったことで、その男に遊ばれたのではと想像していたから、そんな相手と結婚して不幸になるくらいならシングルで育てた方がいいのでは、とお父さんと話し合って決めたのだと母は言った。

 指輪が左手の薬指に嵌められると、私にしか聞こえない声で彼が呟いた。

「今度こそ幸せにする。寧子と秀也を守るから」
「……もう一人、いるかも」

 私がお腹に手を当てて言うと、拓也の表情が驚愕に変わった。

「本当に?」

 腰を引き寄せられると、列席者からはひやかしの声が聞こえてきた。
 牧師は進めていいのか判断に困っているようで、苦笑を見せる。

「うん」

 嬉しい、と声にならない声で告げられて、胸が詰まる。

 あの日、私は拓也にひどいうそをついた。
 妊娠したと。でも、あなたの子ではないと。
 おそらく拓也もそれを思い出したのだろう。
 一瞬だけ、泣きそうに瞳を揺らしたあと、唇を噛みしめるような笑みを浮かべた。

 私たちの胸には、あの日の消せない痛みがある。
 だからこそ今、こうして彼の隣にいられることが嬉しくてならなかった。

 彼の顔が近づいて、ベールが持ち上げられる。
 唇が触れると、彼はもう一度、私の身体を強く抱き締めたのだった。


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