エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
事務所の向こうから声がする。どうやら和利が帰宅したようだ。そのまま事務所ではなく裏にある自宅に向かおうとする。
「親父、待てよ。ちょっとこっちにこい」
賢哉は強い口調で自らの父親を事務所に呼びつけた。
「なんだよ、もう風呂入って寝たいんだ」
赤ら顔の和利は、今日もどこかでいっぱいひっかけてきたらしい。息も酒臭く、到底まともな話ができるような状態ではないが、このままにしておくわけにはいかない。
賢哉も同じ考えだったらしく、和利を事務所の中に引っ張って来た。
「おい、親父。これどういうことだよ」
「これって……あぁ、これな」
画面を確認してそれが菜摘の銀行口座の履歴だと理解したようだ。どうやら話くらいはなんとかなりそうだ。
「こんなところに置いていても、なんにもならんから俺が使った」
「何にもって! これは父が私に残してくれた学費なのにっ!」
普段は自分勝手な叔父に対して声をあらげることなどない菜摘だったが、今回は我慢ができなかった。
「学費学費って、女が勉強して何になるんだ。意味のないことに金を使うな」
「ギャンブルや酒の方が意味ないだろう! 留学の費用だけでもどうにかしろよ、親父」
賢哉はなんとかして、菜摘を留学させたかった。両親がいなくなってから我慢をしてきた彼女が唯一自分からやりたいと言ったことだ。
「いくら残ってる? 足りないぶんは俺の貯金を使っても――」
「ない」
「ないって……まさか五百万もあったのに」
「全部なくなった。あぁ、お前の貯金を週末のレースに突っ込めばなんとかなるかもしれない」
「親父! ふざけんな」
賢哉が和利の胸倉をつかんだ。和利は苦しそうに顔をゆがめる。
「ないものはない。菜摘にはあんなはした金なんでもないだろう?」
「ひどい、あれはお父さんが残してくれたお金なのに」
生前の父が、彼女のために残したものだ。だからこそ菜摘は苦しい生活の中でも進学をあきらめずに済んだ
「加美の御曹司と付き合ってるんだろう? 適当に色仕掛けでもすれば留学費用なんてすぐに出してもらえる。お前から言えないなら俺から言ってやる。学費以上ひっぱってやるから、ほらすぐに連絡してみろ」
「な……清貴は関係ないじゃない!」
「親父、待てよ。ちょっとこっちにこい」
賢哉は強い口調で自らの父親を事務所に呼びつけた。
「なんだよ、もう風呂入って寝たいんだ」
赤ら顔の和利は、今日もどこかでいっぱいひっかけてきたらしい。息も酒臭く、到底まともな話ができるような状態ではないが、このままにしておくわけにはいかない。
賢哉も同じ考えだったらしく、和利を事務所の中に引っ張って来た。
「おい、親父。これどういうことだよ」
「これって……あぁ、これな」
画面を確認してそれが菜摘の銀行口座の履歴だと理解したようだ。どうやら話くらいはなんとかなりそうだ。
「こんなところに置いていても、なんにもならんから俺が使った」
「何にもって! これは父が私に残してくれた学費なのにっ!」
普段は自分勝手な叔父に対して声をあらげることなどない菜摘だったが、今回は我慢ができなかった。
「学費学費って、女が勉強して何になるんだ。意味のないことに金を使うな」
「ギャンブルや酒の方が意味ないだろう! 留学の費用だけでもどうにかしろよ、親父」
賢哉はなんとかして、菜摘を留学させたかった。両親がいなくなってから我慢をしてきた彼女が唯一自分からやりたいと言ったことだ。
「いくら残ってる? 足りないぶんは俺の貯金を使っても――」
「ない」
「ないって……まさか五百万もあったのに」
「全部なくなった。あぁ、お前の貯金を週末のレースに突っ込めばなんとかなるかもしれない」
「親父! ふざけんな」
賢哉が和利の胸倉をつかんだ。和利は苦しそうに顔をゆがめる。
「ないものはない。菜摘にはあんなはした金なんでもないだろう?」
「ひどい、あれはお父さんが残してくれたお金なのに」
生前の父が、彼女のために残したものだ。だからこそ菜摘は苦しい生活の中でも進学をあきらめずに済んだ
「加美の御曹司と付き合ってるんだろう? 適当に色仕掛けでもすれば留学費用なんてすぐに出してもらえる。お前から言えないなら俺から言ってやる。学費以上ひっぱってやるから、ほらすぐに連絡してみろ」
「な……清貴は関係ないじゃない!」