エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
なぜ叔父が彼のことを知っているのだろうか。
いや叔父は昔から金の匂いにはすごく敏感だった。そしてみつけた金づるに対する執念もすさまじかった。
そんな叔父から清貴の名前が出てきたことに、菜摘は恐怖さえ感じた。
「関係ないわけないだろう。一緒に留学する仲だ。なに心配しなくても、俺られにとって大金だったとしてもあちらさんにとってははした金だ。なにせ世界の加美電機だからな」
「おじさん! そんなことしたら許さないから」
「おお、学がある女は怖いね」
真剣に怒る菜摘をバカにするような言い方をしながら、和利は立ち上がった。
「金はない。留学したいなら彼氏に頼むんだな。ついでに、俺への金も融通してくれるとありがたいんだがな。あははは」
今にも泣き出しそうな菜摘の横を、おお声で笑いながら去っていく。
息子である賢哉でさえ、自分の父親の横暴さに呆れて声もでないようだった。
和利が事務所から出た瞬間、菜摘の目から涙がこぼれる。しばらく事務所には彼女のすすり泣く声だけが響いていた。
(どうして……こんなことになるの?)
留学のために様々な試験を受けやっと手に入れた権利だった。清貴と同じ位置には立てなくても少しでも彼の見ている世界が見たいと努力して、アルバイトも勉強も頑張ってやっと留学できることになったのに、それが一瞬にして泡のように消えてしまった。
「菜摘……すまない」
どれくらい時間が経ったのか、賢哉が菜摘に深く頭を下げた。
「俺からもう一度話をしてみる。ここに俺の貯金も少ないけどあるから」
賢哉はポケットから自分の通帳を取り出し差し出した。しかし菜摘は首を振ってそれを受け取らない。
「賢哉くんのお金は使えないよ」
賢哉もまた、父親の身勝手に振り回されている人物のひとりだ。働かない父親に代わって彼が菜摘の父の残した工場と技術を守ってくれている。いわば彼も犠牲者といってもいい。
「いや、それくらいしか俺にはできないから。それより加美さんのことだけど」
「うん」
菜摘の力ない返事に賢哉も胸が痛む。
「親父のことだから恥ずかし気もなく、向こうの家におしかけるかもしれない」
賢哉は頭を抱えて大きく息を吐いた。これまでの和利の行動から考えてあり得ることだ。
「それは絶対にさせない。たぶん一度ですまないと思うから」
いや叔父は昔から金の匂いにはすごく敏感だった。そしてみつけた金づるに対する執念もすさまじかった。
そんな叔父から清貴の名前が出てきたことに、菜摘は恐怖さえ感じた。
「関係ないわけないだろう。一緒に留学する仲だ。なに心配しなくても、俺られにとって大金だったとしてもあちらさんにとってははした金だ。なにせ世界の加美電機だからな」
「おじさん! そんなことしたら許さないから」
「おお、学がある女は怖いね」
真剣に怒る菜摘をバカにするような言い方をしながら、和利は立ち上がった。
「金はない。留学したいなら彼氏に頼むんだな。ついでに、俺への金も融通してくれるとありがたいんだがな。あははは」
今にも泣き出しそうな菜摘の横を、おお声で笑いながら去っていく。
息子である賢哉でさえ、自分の父親の横暴さに呆れて声もでないようだった。
和利が事務所から出た瞬間、菜摘の目から涙がこぼれる。しばらく事務所には彼女のすすり泣く声だけが響いていた。
(どうして……こんなことになるの?)
留学のために様々な試験を受けやっと手に入れた権利だった。清貴と同じ位置には立てなくても少しでも彼の見ている世界が見たいと努力して、アルバイトも勉強も頑張ってやっと留学できることになったのに、それが一瞬にして泡のように消えてしまった。
「菜摘……すまない」
どれくらい時間が経ったのか、賢哉が菜摘に深く頭を下げた。
「俺からもう一度話をしてみる。ここに俺の貯金も少ないけどあるから」
賢哉はポケットから自分の通帳を取り出し差し出した。しかし菜摘は首を振ってそれを受け取らない。
「賢哉くんのお金は使えないよ」
賢哉もまた、父親の身勝手に振り回されている人物のひとりだ。働かない父親に代わって彼が菜摘の父の残した工場と技術を守ってくれている。いわば彼も犠牲者といってもいい。
「いや、それくらいしか俺にはできないから。それより加美さんのことだけど」
「うん」
菜摘の力ない返事に賢哉も胸が痛む。
「親父のことだから恥ずかし気もなく、向こうの家におしかけるかもしれない」
賢哉は頭を抱えて大きく息を吐いた。これまでの和利の行動から考えてあり得ることだ。
「それは絶対にさせない。たぶん一度ですまないと思うから」