エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
 いつの間にか眠っていた菜摘が目を開けると、彼女をじっと見つめている清貴と目が合った。

「おはよう。大丈夫か? 昨日は少し無理をさせたか」

「ううん、頼んだのは私だし」

 明け方まで泣いたせいで確実に目が腫れている。彼の長い指はのびてきて慌てて菜摘は距離を取った。

 昨日までと今日からは違う。自分の中できちんと線をひかないといつまでも彼に頼ってしまいそうだ。

「先にシャワー浴びて、ご飯作るね」

「あぁ、頼んだ」

 菜摘はベッドから降りると振り返りたくなるのを我慢して、そのままバスルームに向かった。


  
 シャワーを浴びた後はいつもの朝と変わらない。キッチンに向かって朝食をつくりはじめる。

 この食事が終わったら彼に別れを切り出すつもりだ。緊張はしているけれど、もしかしたらふたりで食べる最後の食事になるかもしれないと思うとちゃんとしたものを食べてもらいたかった。

 しかしその願いは、思わぬ方向から叶わなくなる。

「菜摘、何だこれは」

 突然キッチンに現れた清貴が見せてきたのは、彼のスマートフォンの画面だ。なにか画像が表示されているのを覗き込んだ。

(私と、賢哉くん?)

 どうやら産婦人科からでてきた時の画像だ。しかしそこには一緒にいるはずの桃子の姿は映ってなかった。

「これがどうしたの?」

「それは俺が聞いているんだっ」

 声を荒げた清貴に驚いて菜摘はその場で固まってしまう。こんな形で彼が怒りをあらわにするのは珍しい。

 なぜ彼がこの写真を持っているのか、なぜこんなに怒っているのか、怒りの理由がわからなかった。

 驚きと戸惑いで声も出せずに彼を見つめる。

(もしかして私の体のことを知ってしまったの?)

 今から話そうと思っていたが、事前にそれを知ってしまった彼がこんなふうに怒ってしまったというのだろうか。

 いやしかし清貴が菜摘の病状を知ってこんな形で怒りをぶつけてくるとは考えづらい。まずは何を置いても体の心配をするだろう。

(じゃあどうして?)

 憎しみに歪んだ清貴の顔を見て菜摘は混乱をきたす。

 しかし黙り込んだままの菜摘の態度が、清貴をますます怒らせた。

「なぜこの男とふたりで産婦人科から出てきた? 昨日俺に抱かれたのはこいつとのことをうまくごまかすためか?」

「え、何言って――」

 清貴のはなった言葉が菜摘に衝撃を与えた。どうやら彼はとんでもない誤解をしているらしい。

「何って、関係ない男と産婦人科から出てくるなんてこと、ありえないだろう」
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