エリート御曹司に愛で尽くされる懐妊政略婚~今宵、私はあなたのものになる~
 なぜだかもう菜摘にはわからなかった。ただ彼の口から出る心無い言葉を受け止める気力が出なかったのだ。

 子供ができない菜摘は、あの画像が送られてこなくても、近いうちに清貴と離婚することになっていただろう。役割を果たせないのだから当然だ。

 ならばどうせ別れることになるのだからこれ以上はもう傷つきたくない。菜摘はもうすべてから逃げることにした。

「わかった」

 殻に閉じこもった菜摘に、清貴は短い返事をすると財布とスマートフォンを持って外に出て行ってしまった。

 バタンと玄関の扉が閉まった瞬間、菜摘はその場にくずおれる。そして床に大粒の涙を落とした。

 拭っても拭ってもあふれてくる涙。

「どうして、こんなことになっちゃたんだろう」

 別れるにしても、こんな形になるはずじゃなかった。傷つくのは自分だけのはずだった。それなのにどうして。

 少なくとも信頼があれば、あんな画像だけで、あそこまで菜摘を糾弾することはなかったはずだ。

 すべてはこの結婚が間違っていたから、偽りの結婚生活には信頼なんてものは存在しなかったのだ。

 その存在を信じていたのは、菜摘だけだった。そして今それがなかったと証明された今、一刻も早くこの場から去るのが自分と清貴のためになる、そう思えた。

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