23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
美弥と北沢を見ながら、握りしめた掌は、血が噴き出すんじゃないかと思うほどに、親指の爪が、自身の拳に食い込んでいた。

「見た?颯」

するりと、肩に添えられた掌に、ベージュの髪が、ふわりと揺れて甘い香りがする。

「お似合いじゃない?幼なじみで、しかも、あの千歳が、熱を上げてる訳だし」

俺は、これ以上は、美弥と北沢を見ていられなくなり、最上階の副社長室へと足を向けた。

ピンヒールの足音が、少し離れて着いてくる。

「着いて来んなよっ」

「怒鳴らないでよ。はい、これ今日の資料よ。1時間後に出発だから」

俺は、実花子から、資料をふんだくるようにして受け取ると、副社長室の扉を開けて、ソファーに体を投げ出した。

「くそっ!」

拳を、ソファーに叩きつける。

ーーーー俺は、美弥が好きだ。  

どうしようもない程に。大事にして泣かせたくない。触れれば、どうしても、美弥を抱きたくなるから。だから、美弥の気持ちが固まるまでは触れないと決めた。

「何でだよっ」

本当は、いつだって触れたい。触れてキスをして、抱きしめて、美弥がもう何処にもいけないほどに心も身体も俺でいっぱいにして、俺だけのモノにしたい。
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