23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜

「北沢課長ってお酒強いですよねー」

焼き鳥盛り合わせの、モモを頬張りながら、向かいの麻美が、カシスオレンジをストローから吸い込んでいく。

「どっちかというとそうかな、酔っ払う事ってほぼないから」

隣で胡座をかいている千歳は、だし巻き卵を咀嚼しながら、2杯目のビールを飲み干した。

「すいませーん、ビール3つ追加でー」

隣のテーブルから注文の声がとび、同じグループの営業マンたちの楽しそうな笑い声が響く。

「綾乃さんの歓迎会って名目だけど、忙しかったからね、皆楽しそうだな」

隣の営業マン達のテーブルの様子を眺めながら、千歳が豆腐サラダを取り分けて、私と麻美の前に、それぞれ置いていく。

「課長って、本当何でもスマートですよね、他の部署の女の子も、課長が、素敵だって騒いでましたよ」

「それは嬉しいね」 

「ね、美弥ちゃん」

「……うん」

麻美は酒が入ってるからだろうか、いつもよりよく喋る。そんな麻美と千歳を前に、私は手元の時計ばかりが気になってしまう。

(颯は今頃、どうしてるんだろうか……実花子さんと同じ部屋なんて……二人が一緒に泊まることを考えただけで、また涙が出そうだ)

「実は、気になる子が居るんだけど、なかなか振り向いて貰えなくてね」

ふいに、左手が温かいもので包まれる。

(えっ……)

見れば、隣の千歳が、俯きがちな私の膝の上の手を握りしめていた。

「え、そうなんですかー?」

テーブルの下は掘り炬燵になって居る為、向かい合わせの麻美からは見えないだろう。誰に見つかるわけでもないのに、それでも、鼓動が早くなる。
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