23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「美弥ちゃん?どうかした?」

「あ、……何、も」

「綾乃さんも、もっと食べなきゃな、細いからって、これ、セクハラになんのかな?」

「課長、それはセクハラ案件ですね」

麻美がおどけたように笑う。

「じゃあ、二人とも忘れて貰うってことで」

3杯目のビールを注文しながら、涼しい顔で左利きの千歳が、ネギマを食べ始めた。

千歳の指先が、私の指先に絡められる。

「ねぇ、さっきの課長の好きな人って、どんな人ですか?」

麻美が、レタスを箸で、挟みながら千歳に訊ねている間に、私は、そおっと千歳の指先から逃げ出したが、すぐに千歳の掌に握り直される。

「うーん、猫みたいな子かな。ちゃんと捕まえておかないと、すぐに逃げちゃうんだ。僕は、いつも追っかけてるんだけどね、逃げられちゃって……」

「なんか安心しちゃうな、って、課長、仕事は完璧なのに、恋愛は完璧じゃないんですね」

「あはは、そうだね。また、いい知らせができたら、報告するよ」

千歳は、唇を引き上げてから、三杯目のビールを飲み干した。

私は、繋がれた掌が、やけに、じんと熱く感じて、それを、紛らわすかのように、目の前のレモン酎ハイに、小さく口付けた。
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