23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
『何、だよ……つい喋ったけど、別にアンタに関係ないだろ』

『死んだら……悲しいよ。貴方のお父さんだって……貴方が、死んだら悲しいと思う。子供が、親が死んで悲しいように、親だって子供が、死んだら悲しいに決まってるもん。私だって、貴方が、死んだら悲しいもんっ!』

何故だかわからない、それでも、このままじゃ彼が、誰からも必要とされてないと感じたまま大人になる気がして、気づけば、涙が溢れていた。

『何で、アンタが泣くわけ?』

ボロボロと涙をこぼす私を眺めながら、彼は目を丸くした。

『泣いてないもんっ』

袖で、目尻をさっと拭うと、切長の綺麗な瞳と初めて視線を合わせた。涙が、滲み出ないように、口を少し尖らせて力を込める。

じっと、私を見ていた彼が、白い歯を見せて、少年みたいに笑った。

その時、とくんと心臓が、返事したことを思い出す。

『ふっ……じゃあ、泣いてないことにしといてやるよ、ありがとな』

あの時の、彼の笑顔が、目の前で、私の頬を包み込んでくれる颯に重なって、また涙が(こぼ)れた。

「やっと思い出した?」

頷くと、月明かりに照らされて、丸い粒が、真珠の様に光りながら落ちていく。

「もう泣くな、泣かなくても、俺、何処にも行かないし、美弥だけしか見てない」

「颯の……忘れられない人って……」

「決まってんだろ、美弥だよ」

そのまま、颯の唇が、私の唇に重ねられて、唇の熱が、じんわりと全身をあたためていく。

颯は、唇をゆっくり離すと、私の唇を親指でなぞった。

「あん時さ、本当はさ……親父への腹いせに死んでやろうかって思ってたんだ……でもさ、美弥が涙一杯、溜めてさ、見ず知らずの俺の為に、死んだら悲しいって泣く姿見たらさ、なんか、馬鹿らしくなってさ。それだったら、親父が、何一つ、俺に文句言えない位、立派な経営者になってやろうって思ったんだ……」

颯が、私の額にコツンとおでこをくっつけた。
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