23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜

振り返れば、明るめのベージュの髪を一つに纏めて、シフォンのブラウスに黒のタイトスカートを履いた女性が、立っていた。

「颯！どういうこと？！」

綺麗な二重瞼をきゅっと細めながら、女性はピンヒールを鳴らしながら、颯に詰め寄った。

「実花子(みかこ)、デカい声だすなよ、うるせぇな。コイツは、俺の婚約者の綾乃美弥」

「は？何、それ……どう言うことよっ」

実花子は、私の姿を頭の先から爪先まで、ジロジロと見ている。

颯は、朝の挨拶でもするかのように、サラリと口にする。

「ひ、拾ってきた？颯！正気なの？こんな……何処にでもいるような子……」　

「それ以上言ったら辞めさせるよ？」

颯は、低い声で、見たことないような冷たい視線を実花子に向けると、私の肩を抱いた。　

「わ、……あの」

「美弥、こいつは俺の秘書の棚田実花子(たなだみかこ)。お前には、とりあえず企画第一営業部の営業アシスタントとして働いてもらう。上司は、確か北沢(きたざわ)だっけ？になるから、あとで、仕事内容聞いて」

あまり実花子と話したくないのだろうか？

颯は、私の肩から、するりと手を離すと、更衣室から出て行った。