23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
(ものすごく……気まずい……そして、ものすごく綺麗な人……)

実花子は、少しだけ考え込むような顔をしていたが、やがてその綺麗な顔を上げて、私を睨んだ。

「あたしはアンタの事、颯の婚約者だなんて認めないからっ」

そのまま実花子は、ピンヒールをカツカツと鳴らしながら、扉に手をかけると、振り返った。

「そこの野良猫!早く着いてきなさいよっ」

「あ、はいっ」

(今……野良猫って言った?……野良といえば野良みたいなもんだけど……)

私は、おろしたての履き慣れないヒールのついたパンプスを、引きずるようにしながら、実花子の後を、慌てて着いていった。
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