23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「ったく、どんだけ書類あんだよ」
あらゆる案件の承認依頼の書類が、山積みになっており、いまにもデスクから雪崩が、落ちそうだ。
パソコンのメールと株価の動きをチェックしながら、経済新聞に目を通していく。
コンコンとノックされた音に、思わず眉間に皺が寄る。
「あからさまに嫌な顔するのね」
実花子が、ブラックコーヒーを、俺に差し出しながら、ため息をついた。
ーーーー俺と実花子は、2年前まで付き合っていた。
それまで女が途切れた事は無かったが、どの女も、俺の肩書き目当てなのは一目瞭然で、本気になれたことなど一度も無かった。
群がってくる女を抱きたい時に呼び出して、ホテルでセックスする。女なんて、それ以上でもそれ以下でも無かった。
「美弥の事、苛めてないよな?」
「別に。企画第一営業部に連れて行って、デスクの、場所教えてきただけ。あとは北沢にお任せ。ってゆうか、颯、あんな子を婚約者にするとか、一体どうしちゃった訳?」
「一目惚れ」
ニッと笑った俺の顔を見下ろしながら、実花子の目が面白いほどに、大きくなった。
「な、にそれ。颯が一目惚れ?そんなのある訳ないじゃないっ」
「何で?俺が一目惚れしちゃ悪い?」
俺は、ブラックコーヒーに口付けながら、頬杖をついた。