23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「今まで、そんな事一度もなかったじゃない!」

「そうだよ、今までの女は、皆んな本気になれなかった。でも美弥は違う。絶対に、俺に本気にさせる」

「颯らしくない」

「別に、お前に何言われても、どうでもいい。俺が、欲しいのは美弥だけだから」

「颯を理解できるのは、私だけだからっ」

実花子は、手に持っていた承認依頼の書類の束をワザと、ばさりと音を立てて、デスクに置くと、秘書室へと戻っていく。

「ったく……」

実花子との交際は、俺にしては、長く1年続いた。実際、実花子は、いい女だと思う。秘書としての仕事は完璧にこなし、付き合っている間は、会社では、一度も俺と交際している素振りは出さなかった。甘えてくるのは、就業時間が終わってからだ。

恋人同士としての居心地は、良かったが、結婚を意識していた実花子と俺は、次第に距離ができて、俺から振った。

俺は、実花子を生涯を共にするパートナーとしては見れなかった。 

「美弥……」

ーーーー理由は、俺は美弥を忘れたことはなかったから。俺は、鍵付きの1番上の引き出しから、ずっと大切にしている白いハンカチを取り出した。『綾乃』と赤い糸で刺繍してあり、猫のマークがついている。

「みや、ミャーで、猫のマークか……」 

俺は、最上階の15階の社長室から、外を眺めながら口角を上げる。

そのまま、事前に調べて置いた、デスクの内線番号をプッシュした。
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