23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
(わっ……すごっ)

事務所の中は熱気に包まれている。パソコンを叩く音と、鳴り止まない電話。フロアに5台置いてあるFAXは、競うように電波を送り続けながら、受発信をくりかえしている。

私が、配属された企画営業第一課は、主に新規事業のシステムキッチンの開発、受発注、納品を扱っている。

そして、仕事内容によって細かくグループ分けされていた。受発注部門、発送部門、企画開発部門、見積り部門、の4つに分かれており、それぞれのグループに営業マンが5名ほど在籍し、営業をサポートする、営業アシスタントが各グループに2名つけられていた。

「大丈夫?もうすぐ、課長来るからね」

隣から、優しく声をかけてくれたのは、私が配属された企画開発部門の営業アシスタントをしている星川麻美(ほしかわあさみ)だった。

「あの、星川さん……」

慌ただしい事務所の雰囲気に圧倒されていた私に、麻美は、猫目をニコッと細めた。

「他のグループは、朝こんな感じで、依頼や返答でバタバタするんだけど、うちのグループは、忙しいのは午後からだから」

「そうなんですね……」

肩をすくめた私に、麻美は、クスクスと笑った。
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