23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「僕は、北沢千歳(きたざわちとせ)。直属の君の上司になるかな。宜しくね」

思わず、千歳くんと、呼びそうになって、慌てて、千歳から差し出された、大きな掌を握り返した。千歳は、私を見ても顔色一つ変えない。

(同姓同名の……?でも顔も……ソックリ)

「じゃあ、皆んな仕事再開してね」

千歳が、デスクに座った途端に、また事務所内は、騒がしさを取り戻す。

「あとで、綾乃さんの仕事について、僕が研修会するから、会議室来てくださいね」

「はい、宜しくお願いします」

千歳は、そういうと、パソコンを開き、忙しく指先を動かしている。

私も電子商品カタログを見ながら、安堂不動産のシステムキッチンの特徴や、機能、オプション、原価、販売価格を頭に叩き込んでいく。

不意に、パソコンのメールボックスに新着メールが届いた。

(颯かな……)

直ぐに、クリックして開けば、

『美弥、久しぶり。隣に住んでた千歳だよ。あとで、ゆっくり話そ』

理解するのに3回ほどメールに視線を流す。

(あ!やっぱり、千歳君なんだ)

目をパチクリとさせた私を眺めながら、斜め向かいから、千歳がクククッと笑ったのが聞こえた。

少しだけ視線を、上げて見れば、千歳は長い人差し指を口元に当てて、にこりと微笑んだ。
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