23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「颯、どうして分かったの?」

扉を入ってすぐに、颯は、私の靴擦れに気づいた。

「そんなの、婚約者だからに決まってんだろ。美弥の変化には、すぐ気づくから」

颯は、平然とそんな言葉をスラスラと口にしてしまう。

「ってゆうか、その靴のメーカー、ムカつくな。美弥にケガさせやがって」

見れば子供みたいに口を尖らせている颯が、居て、思わず私は、笑っていた。

「笑い事かよ、マジで買収してやろうか」

私は、笑いながら、首を振った。

「元々新しい靴履くと、すぐ靴擦れしちゃうの。だから、その、消毒……してくれて……ありがとう」 

颯が、一瞬じっと私を見た。

「別に。あとこれ」

颯は、新しいストッキングを私に手渡す。

「あ、ありがとう」

「俺は、どう思われてもいいけどな、美弥が
困るんじゃねえの?そこの俺専用の更衣室、使えよ」

確かにそうだ。副社長室に行って帰ってきたらストッキングを履いてないなんて、何もなかったとはいえ、説明しづらい。

(いや、何もなかったと言い切れるだろうか)

更衣室に入り、真新しいストッキングを履きながら、途端に顔が熱くなった。 


ーーーープルルルッ


ふいに、颯の部屋の内線電話が鳴る。

「はい、何?」 

私は、急いで身なりを整えると、更衣室から出た。

「あぁ、綾乃なら、今から出るとこ。はいはい、分かった」

颯が、内線電話の受話器を置いたのを確認してから、私は声をかけた。

「颯、私……」

「あぁ、北沢が、会議室3に居るから、来いってさ」

私は、手元の時計を見て、口元を覆った。

ーーーー11時15分だ。

「大変、遅刻っ」

「おい、美弥っ、こけんなよ」

私は、颯の言葉を背に慌てて、扉を開けると5階の会議室へと小走りで向かった。
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