23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜

パタパタと小さくなっていく足音を聞きながら、俺は大きなため息を吐き出した。

(マジで……ヤバかった……)

デスク前の椅子に腰掛けると思わず、俺は口元を覆っていた。

美弥が、自分がいかに隙だらけなのか、わかってないことに苛立った俺は、部屋に入ってきた美弥の靴擦れを見つけて、少し揶揄うだけのつもりだった。

それなのに靴擦れを舐めた側から、顔を真っ赤にして、ビクンと体を揺らす美弥が、たまらなく色っぽくて、思わず、このまま抱いてしまおうかと思った。

でもキスしようとした時、涙目になって、小さく体を震わせる美弥を見た瞬間、すぐに気づいた。


ーーーー美弥がキスをしたことがないという事を。
 
つまりは、美弥は、まだ誰ともシタ事がない。

「あの可愛さで処女とか……嘘だろ」

俺は、自分の髪をくしゃっと握った。

美弥の側にいて、美弥に触れるたびに、自分でも思ってた以上に美弥にのめり込んでいくのがわかる。

「早く、俺のこと、思い出して、好きにならねぇかな」

あの日、偶然コンビニで美弥を見つけた日から、俺の時間は、8年前に逆戻りだ。

ーーーー俺はあの日、美弥に『一目惚れ』したから。

「しっかし、マジで、そのうち襲っちまいそうだな……」

一緒に食事して、一緒のベッドで眠る。果たして、俺の薄っぺらい理性は、どこまで持つのか自分でも分からない。

でも、強引に美弥を自分のモノにはしたくない。

美弥が初めてならば尚更だ。美弥の気持ちが1番大切だから。

「はぁ……マジで……いつまで禁欲続ければいいんだよ」

誰にも聞かれることのないため息と、俺の切実な願いは、真っ白な天井に吸い込まれていった。
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