23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「それにしてもさ、美弥、綺麗になったね」

「え!さっきは、千歳くん変わってないっていってたよ」 

「そうだっけ?」

無意識に尖らせた唇を千歳が、人差し指でクイッと押した。

「ち、千歳くんっ」

「懐かしいだろ?美弥が拗ねたとき、人差し指で押して引っ込めてやるの、僕の役目だったよな」

思わず笑った私を見ながら、千歳も笑った。

「な、今度飯行こ?」

「いや、あの」

何て言えばいいんだろう。颯のお試し婚約者として同棲してること。考え込んでる私を見ながらも、千歳は、構わず言葉を続けていく。

「8年ぶりに美弥に会ったら、正直もっと話したいなって思ったんだけど、ダメかな?美味しいイタリアン知ってるから行こうよ。美弥、スパゲッティ好きだったじゃん。はい、決まりな」

千歳が一息で言うと、形の良い薄い唇を持ち上げた。

「あ、えと」

「でさ、これ、うちのシステムキッチンの主力商品。水栓メーカーもお洒落な海外メーカーと提携して、シンクは全て大理石になってるんだ。それで……」

そこまで言って、千歳がクククッと笑う。

「美弥困った顔してる、もしかして彼氏いる?」

一瞬にして、颯の顔が思い浮かぶ。

(彼氏……じゃないよね。婚約者というか……あれ、でもお試しだから、彼氏は居ない、でいいのかな?)

「彼氏は、その多分居ないと思う……」

「あははっ」

千歳が声を上げて笑った。記憶の端が蘇ってくる。そうだ、千歳は、優しいけど、いつも、こうやって私をすぐ揶揄ってくるのを思い出した。 
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