23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
颯から言われた通り、エレベーターで、地下駐車場まで降りると、駐車場の出入り口でIDカードを翳す。 

「遅かったな」

入口を出てすぐに、今朝、颯と一緒に乗ってきた、白のアウディが停まっていて、颯がボンネットに長身を預けている。

「ごめんね、着替え遅くて」

「隣乗って」

私が、助手席に乗り込むと同時に、颯も運転席に乗り込んだ。ふわりと颯のいい匂いがする。

エンジンを掛けると、すぐに、颯が私をじっと見つめた。見つめられた途端、さっきの実花子の話が頭に浮かぶ。

「何?颯どしたの?」

平静を装って、返事をするが、颯は、黙って私を見つめたままだ。

「美弥、何で、泣いた?」

思わず、吸い込んだ息を吐き出せずに、身体が固まった。

「……泣いてないよ」 

辛うじて、颯に返事をするが、これ以上聞かれたら、また涙が(こぼ)れそうだ。自分が酷く惨めに思えて。

「嘘()くなよ」

颯の大きな掌が、私の頬を掴むと、強引に颯と目を合わせられる。

「ちゃんと俺の目みて」

「やめて……」

「実花子に何か言われた?」

私は、咄嗟に小さく首を振る。

ーーーー颯には、この気持ちを知られたくないから。王子様が本当に恋に落ちるのは、絵本の中だけ。颯が私に恋に落ちるなんて、あるはずないのだから。

それに、私は、颯と実花子が付き合っていたことが思った以上にショックだった。あと、実花子は、今も颯が忘れられないと話していた事も。あんな、同性の私から見ても綺麗で凛とした(ひと)……私なんかより、ずっと、颯にお似合いだ。涙は限界に近づいていて、油断したら、(こぼ)してしまいそうだ。
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