23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「んっ……」

美弥が、小さく唸ったかとおもうと、横向きに寝返りを打った。起きるのかと思ったが、呼吸は規則的だ。

「てゆうか、朝まで寝そうだよな……」

紺色のワンピースのホックに手をかけて、俺は頭を掻いた。

女の服なんて数えきれない程、脱がしてきたのに、美弥だと思うと、脱がして、スウェットに着替えさせてやろうと思うだけなのに、躊躇してしまう。

さっきの、あのキスのあとに、今、美弥の下着姿を見てしまったら、正直なところ、理性を保つ自信はない。

思案している俺を横目に、美弥は寝顔を晒して気持ちよさそうに呼吸を繰り返す。

(……やっぱ……ちょっと見るだけなら、いっか)

欲望に負けて、再びホックに手をかけた時だった。

「フーーーッ」

「おっと」

ミャーがベッドに飛び乗ると、尻尾と耳をピンと立てて、俺に向かって威嚇している。

俺は、慌てて、ホックから指を離した。

「あー……分かったよ、見んなってことな」

そして、ミャーが俺のワイシャツを小さな手でチョイチョイとする。

「飯もな、ったく、来いよ。手のかかる猫ばっかだな……」

俺は、ミャーを抱えると、リビングへと足を向けた。  
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