23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「てゆうか、1番行きたかったのが、何で動物園なんだ?」

私は、颯の運転する車が駐車場に停止したのを確認してから助手席のベルトを外した。そして、隣の颯の目のやり場に困るのは、颯がスーツじゃないからだ。

「その、デートってした事がなくて、動物園デートに憧れてたから……」 

「で?俺の方見ないのは何で?」

「颯の私服姿、見慣れてないから……」

「ばぁか、休日にわざわざスーツきて、動物園でデートするヤツいるかよ」

黒のテーパードパンツに上質な白いシャツを着た颯は、その長身と引き締まったスタイルに、綺麗な顔も合わさって、モデルみたいだ。

「似合ってんじゃん」

颯からプレゼントされた、どこかの海外ブランドの秋の新作モデルだという、キャメルの細かいドット柄のロングスカートに、薄手の白のブラウスに、透かし模様の入った黒のカーディガンを纏った私を眺めて、颯はニッと笑う。

「こんな、お洒落で高価なの着たことないから……」

「今年の秋冬はカラフルポップがトレンドらしくてさ、そんな中でも美弥に似合うのは、この色の組み合わせだなと思って」

私は、キャメルスカートをそっと広げながら、自分の姿を見下ろす。
茶、白、黒の三色がバランスよく配置されている。

(あれ……この配色って、ミャーと一緒だ……偶然だろうか)

「可愛い」

「……恥ずかしい」

「へぇ……じゃあ此処で、もっと恥ずかしくなるように、抱っこしてやろうか?」 

「無理だよっ」

ぶはっと吹き出しながら、颯が、少年みたいに笑った。

(あ、れ……)

一瞬だけ、どこかで颯の笑顔を見た事があるような気がした。

もっと昔に……どこかで。
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