23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「どした?」

「ううん、何でもない」

「あっそ、俺チケット買ってくるから」

颯の後ろ姿を眺めながら、初めてのデートに胸が高鳴ってくる。

私の両親は、私が高校一年の時に事故で亡くなった。バイトと勉強の両立で精一杯で、同世代の子達と、カラオケにいったり、恋をしたりと、世にいう、青春にいうものに縁がなかった。

そんな自分に、ようやく訪れた初めてデートが、いつかデートで来てみたかった動物園で、更には、相手が、王子様みたいな颯で、私は緊張を通り越して、魔法をかけられたシンデレラの様に、ふわふわと夢見心地だった。

「ほらよ」

颯は、私にチケットを渡す。 

「ありがと。ねぇ、颯……今更だけど、動物園じゃない方が良かった?」

今更ながら、ふと、心配になった。颯は今までの女の子とどんなデートをしてたんだろう。やっぱり、高級レストランで、食事して夜景ドライブとかだろうか。

「いいよ、俺も動物園デートって初めてだし」

「え、そうなの?」

思ってもみない返事に、颯に聞き返した。

「まあな、俺のお決まりのデートコースは、飯くって、すぐホテルなんで」

「あ……」

「あっ、ってなんだよ」

颯は、意地悪く笑うと、当たり前のように私の手を握り、指と指を絡めた。

男の人の初めてのゴツゴツとした指先に自分の指が挟まれて、絡まった指先に通う血液が皮膚を通して、触れ合う感覚がした。
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