23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「わぁ、可愛い」

レッサーパンダが、木に登りながら、フサフサの尻尾をくるんと、動かし、細い木の枝をバランス取りながら、器用に歩いていく。 

「美弥って猫系好きだな。……あれ、レッサーパンダって、ネコ科かと思ってたけど、レッサーパンダ科なんだな」

しげしげと、檻の前のプレートを眺めながら、颯が頷いている。  

「あ、颯、見てみて、ヒョウだよ」

引き締まった筋肉質な体に、鋭い切長の瞳をしたヒョウは、夜行性だからか、木の上にねっ転がって瞳を閉じたり、開けたりを繰り返している。 

「颯に似てる……」

思わず出た独り言は、すぐに颯に被せられる。

「あぁ、俺も夜行性だしな、襲うのは、夜って決めてるし」

「え?!」

颯が、案の定、私の様子を見ながら、クククッと含み笑いをしている。

「……もうー……」

颯と居ると、こうやって、一日中、揶揄われてばっかりだ。それなのに、それはちっとも嫌じゃない。もっと、私だけを見て欲しい、そんな独占欲が、小さく心に芽生えていることを知ったら、颯は、どう思うんだろうか。

「ヒョウは、ネコ科か」

「あ、ほんとだね」

久しぶりの動物園に、私は子供みたいに目をキョロキョロさせながら、目の前の動物達の観察に夢中になっていた。最後に来たのは、きっと小学生の頃だ。

ふいに、クスッと笑った颯を、私は見上げた。

「どしたの?」

「美弥が動物園、楽しんでくれてるみたいで良かったなって」

「うん、連れてきてくれて、ありがとう」

初めて、颯の瞳を見て、キチンとお礼が言えたかもしれない。颯が少しだけ目を見開くと、歯を見せて笑った。

「どういたしまして」

また私の心臓は、とくん、と一跳ねした。

颯の笑顔は、いつか私の心臓そのものを止めてしまいそうだ。

あと、何処に行きたいか颯に聞かれた、私が、動物園と答えたのは、初デートで動物園に行く事に憧れてたのもあるが、両親との思い出の場所だからというのも大きかった。

「小さい頃にね、親に連れてきてもらって以来来たことなかったから……すごく嬉しい」

思い切って連れてきてもらって良かった。今は亡き両親と大切な思い出に、今日の颯との楽しい思い出が加わって、私は、自然と、心があったかくなる。

「そっか」

颯は、それだけ言うと、私の頭をくしゃくしゃっと撫でた。
< 61 / 145 >

この作品をシェア

pagetop