23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
颯が、指差してるのは、まだ子供のマゼランペンギンだ。

ヨタヨタとバランスをとりながら、水際まで歩いていくと、モジモジしながら、ポチャンと落ちて、気持ちよさそうに泳ぎ出す。

「……えっ?あの赤ちゃんペンギン?!私ってあんなにモジモジしてるかな」

思わず、口を尖らせた私を見ながら、颯がケラケラ笑うと、親指で唇に触れた。

「ほらな、口尖らせてんじゃん」

そして、そのまま颯は、鼻と鼻が当たるほどの距離まで近づいてきて、色気のある視線を向ける。

(え?……キス?こんな、皆んな見てる場所で)

ペンギン達の視線までも、こちらを見てる気がして、どうしたら良いのか分からない。

ジリジリと近づいてくる颯に、私は、無意識に僅かに後退りした。

「ほら、困った顔してモジモジしてる」

颯は、鼻と鼻をちょんと付けると、私の額をツンと押した。

「もう、揶揄わないで……」

「さっきから煽ってくんのお前だろ」

(あおる?……)

颯は、私の指先を絡めた指先に、より強く力を込めた。 

「次は、こっちだな」

颯は、動物園のパンフレット片手に順路通りに動物を見ていく。
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