23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜

「颯に抱かれたのね」

実花子は、あからさまな嫌悪感を私に向けながら、綺麗な長い指を首元に向けた。

「え?」

「その場所。私もよく、つけられて困ったから。抱く時の颯のクセだから」

私の瞳から、ついにコロンと涙が転がった。

「何泣いてんの?何度も言わせないで!颯が、アンタに本気になるなんて、絶対ないって言ったでしょ!私でもダメだったんだからっ」

そして、実花子は、真っ直ぐに私と瞳を合わせた。

「……知ってる?颯には忘れられない人がいること」

「颯、に……?」 

頭が真っ白になる。

「そうよ、別れる時に言われたわ。忘れられない女が居るから結婚できないって」

(そんな……颯に忘れられない人がいるなんて……)

「だから、颯の言葉を鵜呑みにしないことね。それに、一度抱かれたなら、あとは、颯がアンタを抱き飽きるのを待つだけね、じゃあ」

実花子は、踵を返すと、ピンヒールを鳴らしながら、颯爽と歩いて行く。

私はただ、その凛とした後ろ姿を見送るしかできなかった。
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