23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
ふいに、スカートのポケットのスマホが震える。

見れば、颯から、何度もラインが入っていた事に気づいた。

『北沢とは、喋んな、近づくな。二人きりでは絶対会うな。理由は帰り話すから』

ラインの入った時刻は、今から30分前だ。ちょうど千歳と話していて、全然気づかなかった。

千歳と二人で話してはいけないとは、どういうことだろうか?

私に颯には婚約者がいる事を、知られない為だろうか?

それとも、まだ抱いてない私に、遊びだとバレて逃げられたくないからだろうか?

『今から会議で連絡取れないから。これ見たら返事いれて』

颯からのラインは、自分勝手なことばかり書いてある。理由もなく、まるで、私が、颯のモノみたいに。

それでも、それが居心地よく感じてしまって、颯にもっと心配してほしくて、心が迷わないように抱きしめて欲しいと、心の片隅で願う自分は、何て馬鹿なんだろう。

颯が私の事、好きだと思ってくれていると、本当は、信じたい。

でも、あの千歳が、嘘を()くとも、私には思えなかった。

「……もう、わかんないよ……」

握りしめていた、千歳から借りたハンカチに、また、丸い水玉模様が、ポトンと落ちた。

私は、暫く迷ってから、『今日は残業になりそうだから、電車で帰るね。ご飯作れなくてごめんなさい』と、千歳の事には触れずに、颯に返信を送った。

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