23時のシンデレラ〜ベッドの上で初めての魔法をかけられて〜
「お疲れ様、ごめんね、二人とも」

ネクタイを緩めながら、入ってきた千歳は、私と麻美のデスクの前に、それぞれココア缶をコトリと置いた。

「有難う御座います」

麻美の後に続いて、私もお礼を伝えた。

「遅くまでありがとう、あとは、僕がやるから、星川さんは上がってくれるかな?」

「あ、わかりました」

ホッチキスを千歳に渡すと、麻美が鞄を持って立ち上がる。

「えと、課長、私は?」

「あぁ、綾乃さんには、『契約の事』で話があるから、少しだけ残ってくれるかな」

契約の事、とは、恐らく、颯とのことだろう。

「じゃあ美弥ちゃん、また明日ね」

「うん、お疲れ様」

麻美が、事務所を出てすぐだった。千歳が、私の隣の席に移動すると、私を覗き込んだ。

「えと……千歳、くん?」

「あれから泣かなかったんだね、えらかったね」

千歳は、大きな掌で、私の頭を撫でながら、にこりと瞳を細めた。

「ココア好きでしょ?飲んでて。残りは、俺やるから」

千歳は、ご丁寧にプルタブまで、開けて私の前に置くと、ホッチキス片手に、パチンパチンと書類を束ねていく。

こくんとココアを一口飲む。疲れているからだろうか、やけに甘くて、ホッとする。

「甘くて、美味しい」

「良かった、昔はよく、美弥ん()で飲んだよね」

家が、隣同士だった私達は、しょっちゅう互いの家を行き来して、よく一緒に遊んでいた。互いに一人っ子だったせいもあるが、今思えば、二つ年上の千歳が、いつも私に合わせて、遊んでくれていたことに気づく。
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