green mist      ~あなただから~
「時川さん、また、銀行にはお見えになりますか?」

「ええ…… 僕にも、あなたのお名前を教えて頂けますか」


 彼は、ほんの少し困ったように眉を下げた。

「あっ。すみません。申し遅れました。水野香音です」


「水野さんですね。水野さんは、ここにはどのくらいのペースで手入れに見えているのですか?」


「毎週月曜日に、手入れに来ています」


「そうですか。また、お会いしそうですね」

「はい」

 また会える。その言に、胸が高鳴っていた。



 次の月曜日

 フロワーには、おじいさんが来ていて、植物の話から食べ物の話になり、雑談しながら植物の手入れをした。

 一通り手入れが終わって駐車場に向かうと、車の横に青い塊が見えた。


「あっ。おねえちゃん!」

 起き上がった塊は、良介君だった。


「どうしたの?」

「ドア開けてあげるね」

 良介君は、後部座席のスライドのドアを開けてくれた。


「ありがとう」

 座席を上げてフラットになっている場所に、サンセベリアを乗せた。


「ねえ。このお花ななんて言うの?」


 肩にかけてある鞄からタブレットを取り出し、『サンセベリア』と画面に書いて、良太君に手渡した。

「サンセベリアか……」

「読むのは得意なのね。ベンチに座ろう」

「うん。漢字だっていっぱい読めるよ。でも、書けないんだ……」

 少し切ない顔をした良太はタッチペンを持ち、一生懸命に文字をなぞりはじめた。


「そうそう、それでいいのよ。書けるじゃない」

「うん。タブレットなら少しだけど、書けそうなんだ」

「そっかぁ。じゃあ、これならどう?」

 タブレットを受け取り、木・日・土と、書いてみた。

 タッチペンを持った良太は、ヨシ!と、気合を入れて書き始めた。


「何をしているのですか?」

 良太と一緒に顔を上げた。

「あ、時川さん。字を練習しているというか?」


 良介君が集中して字を書いているので、彼に事のなりゆきをざっくり説明した。

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