green mist      ~あなただから~
「ただいま戻りました」

「お疲れ様」

 銀行で、若干時間を取ってしまっているが、不思議と予定の帰社時間までには戻れている。経理部に、頼まれた書類を届け行く。

「お帰り、香音。待っていたのよ」

「はい、これでいい」

 茶封筒に入った書類を差し出す。


「これはどっちでもいいのよ。来週金曜日、空いているでしょ? やっと、合コンの日程決まったのよ」


「ちょ、ちょっと、行かないよ」

 まだ、合コンの話が続いていた事に驚いた。よく考えれば、綾乃は簡単に諦めるような人間じゃなかった。


「行くだけでいいから。香音と同じ年らしいよ。同年代の男も見てごらんよ」

「そういう事じゃなくてさぁ」

「えっ。誰か気になる人とかいるの?」

 綾乃は私のぞき込むように私を見た。


「はあ、まさか……」

「じゃあ、いいじゃない。グチグチ引きずってないで、行動するべし!」


 うん? ワタシ、ナニカヒキズッテマシタッケ?
 先生の事だと気づくまでに、しばらく時間がかかった。最近、先生の事を考える事が無くなった。じゃあ、何を考えているんだ?
 強いて言えば…… 良介君の勉強の事かなと、頭では考えたのに目にうかんだのは時川さんだった。時川さんは何歳なのだろう? 落ち着いて見えるが、若そうにも見える。

 時川さんと話をするようになったが、実のところ彼の事は弁護士だと言う事以外は、何も知らない。

 弁護士という事からなのだろうか? それとも窮地を助けてもらったからなのだろうか?不思議と彼への不信感がなく、毎週月曜日を過ごしてしまった。


 正直、合コンへは気乗りしない。だけど、このままでいいとも思わない…… でも、もう、自分に見合わない恋はしたくない。迷惑だと思われる恋など嫌だ。

 同じ年、その言葉が引っかかる。この胸の奥にひっかかるものに、ケリをつけた方がいい予感がする。たいした事ではないと消してしまえるうちに。
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