green mist      ~あなただから~
 紙コップにコーヒーを注ぎ、彼に手渡した。

「ありがとうございます」

 良介くんには、小さなオレンジジュースを渡した。

「僕にも? いいの?」

「うん。いつもお手伝いしてくれるから、お礼よ」


 良介君はストローを刺し、勢いよくぐーっと飲み干すと、また、カタカタとパソコンを打ち出した。


「なんだか、良介君、覚えるのが早いですね」

「ええ。少なくとも、大人より早いですね」

「子供ってそんなものなのですか?」

「いや、良介は特別だと思います」

「そうですよね…… あの…… 変な事聞いてもいいですか?」


 良介くんのパソコンを打つ姿から目を離して、彼の方を見た。

「ええ…… 何でしょう?」

「あー えっと。時川さん、おいくつなんでしょうか?」

 思い切って聞いてみるしかない。


「ああ、僕ですか。三十四才になりましたよ」

 ガーン。大きなショックを受けたようだ。


「ええ! もっと若いかと思いました。結婚していらっしゃるんですか?」

 ショックを受けた事が気付かれないように踏ん張ったら、余計な事まで聞いてしまった。


「なかなか縁がなくて…… 独身です」

 彼は、指輪のない事をアピールするように、手のひらをヒラヒラさせた。

「そうなんですね」

 胸の片隅が、ちょっとほっとしている。


「失礼ですが、水野さんはおいくつですか? まだ、お若いですよね」

「あっ。二十二です。未熟者でして……」

「あははっ でも、どうして年齢をお聞きになったんですか?」


「あの…… えーっと。合コンに誘われて。同じ年の人達らしくて。ちょっと、年齢とかが気になって……」

 私は、彼に何を伝えたかったのだろうか? 合コンの話なんてする必要もないのに。


「えっ? いつですか?」

「今週の金曜日です。行く事に決めました!」

 別に、宣言するような事ではないのだけど…… 胸の中にしまってある気持ちをごまかせる気がした。



「えっ。えっと……」

 彼が何か言いかけたが、ベンチから立ち上がり、良介君に手を振った。

 もし彼に、頑張ってなどと言われたらと思うと、急に逃げたくなった。



 合コン、合コン
 頭の中で、何度も繰り返した。私のすべき事は、合コンなのだ。


 十歳以上も年上じゃないか。私は何を考えていたんだ。
 迷惑だけはかけないようにしようと誓った。
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