green mist      ~あなただから~
 状況から把握すると、間違いなく俺の年齢に引いたんだよな。おじさんだと知って、逃げたという事のようにしか取れない。

「おじさん。どうすんだよ」

 おじさん? 今は聞きたくないワードだ。パソコンに夢中になっていると思っていた良介が、キーボードの手を止めずに言った。

「なにがだ……」

「ねえちゃん。若い奴と合コンだって」

「それが、どうした?」

「いいのか? 姉ちゃん合コンなんて行ったら、すぐに彼氏できるよ」

「だから、なんだ?」

「僕はいいよ。おじさんと違って、これからチャンスはいくらでもある。今は、可愛い小学生でいればいいからな」


「お前は、いったいなんなんだ?」

「分かんないならいいよ。おじさんは、俺のライバルじゃなかったって事だから」

「はあ?」

 子供の話は、分けが分からないと思っていたのだが……


「だって、月曜日以外はここに来ないだろ? しかも、影からチラチラねえちゃんの事見ているからさ」

 そんな気持ち悪い事はしていない、たまたま、影になっているだけだ。

「そんな事はない」

「まあいいや。ライバルは少ない方がいいしね。しょうがない、ねえちゃんに合コンの場所聞くかな?」


「おい。良介! おまえ、ねえちゃんの連絡先知っているのか?」

「えー。おじさん知らないのか? 問題外だな。これ、ありがとう。」

 良介は、パタンとノートパソコンを閉じると、俺の鞄にしまった。


「なあ、俺に、ねえちゃんの連絡先教えてくれよ」

 弁護士の発言か?と言われると自信がない。

「無理。勝手に個人情報は教えられない」

「どこでそんな言葉覚えた?」

「新聞と、ネットニュース。おじさんが言ったんだよ。書けないからといって、読む事まであきらめるな。なんでもいいから読んで覚えろって」

 こういう時に限って、賢いからかなわなん。


「急ぎの用事があるんだ」

 俺は子供に通用する、もっともらしい事を言ったつもりだが。

「無いだろ。嘘つくなよ」

 あっさりバレた。だったら、脅すしかない。


「お前、ねえちゃんの前だと別人だな。ねえちゃんにばらすぞ」

 これでどうだ?


「連絡先知ってどうするんだよ? 合コン行くなって言えるのか?」

 どうして、子供のくせにこんなに大人の事情に頭がまわるのか?


「いや、そういう事じゃなくて」

「じゃあ、おじさん、必ず合コンで姉ちゃんを男から阻止できるか? それなら、姉ちゃんに、電話して場所聞いてやる」

「うっ…… 何だよそれ…… まあいい、俺の番号だ」


 ほんの少しだかけ考えたのだが……
 悔しいが良介の言う通り、連絡先を聞いたところで、彼女に連絡するのは不自然すぎる。俺はポケットから名刺を取り出し、良介に渡した。


「了解。だけど、おじさんもねえちゃんの前だと別人だよ。すごく大人ぶっているしさ」

「断じてそんな事はない、俺は大人だ」


「そうか? 俺に頼らなきゃ、何も出来ないじゃないか。本当に弁護士かな?」

「うるさい」

 良介のキャップの翼をグイっと下げたが、今は、この少年に頼るしかなかった。
 情けない……

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