green mist      ~あなただから~
 表通りに出て、タクシーを拾おうとしたのに、彼女は電車で帰ると言い出した。
 正直、俺は苛立っていた。

 どれだけ飲んだかしらないが、時々フラフラする彼女が危なっかしくて仕方ない。しかも、ミニスカートで一人で歩いてなんかいたら、男が声をかけてくるに違いない。自分の状況を分かっているのだろうか?

 たまらずに、言ってしまった。

「酔って歩いている事を自覚されていますか?う少し危機感を持ってください」

 思ったより、低い声が出てしまった。



 彼女をタクシーに押し込み、自分も一緒に乗り込んだ。

「あの…… どうして、あのお店にいらしたのですか?」

 そりゃそうだ、彼女が聞くのは当然の事だ。でも、今更言い訳なんて思いつかない。

「たまたまです」


 後ろめたい自分を棚に上げ、イライラする自分にコントロールが効かない。

「あの男性は、大学生のようですね。弁護士志望だそうですが、こんなことを言うのはどうかと思いますが、僕にはとてもそうは思えません。弁護士や医者などを志望だと言うと女性の警戒が解けるそうです。あまり、人の言う事を信じないように」

 何故、こんな事を言ってしまうのか、自分でもわからない。


「は、はい。あの…… なぜぞれを?」

「たまたま、耳に入ってきただけです」

「若いので、外で飲むなとは言いませんが、飲む相手は選んだ方がいいですよ」

 これじゃ、自分より若い奴へのひがみにしか聞こえない。


 今まで黙って聞いていた彼女も、さすがに苛立ちを見せ始めた。

「なんか、今日は偉く保護者みたいな事を言うんですね」

 保護者? そうじゃないだろ。 俺はただ、心配しているだけだ。


「僕は、一般的な事を言っているだけです」

「そうですか? 私が、二十二だと知って、子供だと思ってお説教しているんでしょ? その通り、一般的な事もわからない子供ですから」

 何なんだよ。子供だなんて思った事は一度もない。その事を伝えたいだけなのに。


「それなら、あなたはどうですか? 僕が三十四だと知って、おじさんだと思って逃げたでしょ?」

 ずっと胸の奥で、モヤモヤしていた事が、口から出てしまった。


「はい? 私がいつ逃げたんですか?」

「先週です。まあ、あなたから見れば、十分おじさんです。逃げても仕方ありませんけど」

「……」
「……」


 ああ、ああ…… こんな事を言うために、彼女を連れ出したわけじゃない。

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