green mist      ~あなただから~
 薄っすらぼやけて見えたのは、見覚えのない白い天井だ。

 ここはどこだろうか?
「大丈夫か?」

 声のする方へ、目を向けた。

 時川さん?
 なぜ、時川さんが?
 
 状況が、分からず、しばらく時川さんの顔を見ていたと思う。

 仕事中だったはず……
 あっ。確か…… 暗闇の中の男の顔が浮かんできて、体中が震える。

「いやぁー」

 思わず飛び起きた。腕の点滴の管が揺れた。

「もう、大丈夫だから。ここは病院だから……」

 私の肩をやさしく撫でる人が彼だとわかると、急に力が抜けた。

 でも、次から次へと涙がこぼれ落ちてくる。

 怖かった……

「怖かったな…… もう、大丈夫だから……」

 そう言って、肩を抱いてくれている彼の方も、泣きそうな声をしているような気がする。

 段々と状況が見えてくると、恐怖と安堵が入り混じって、とうとう声を上げて泣き出してしまった。

「わーん。 怖かったよー」

 まるで、子供のように。それでも、彼の抱きしめてくれる腕の中は、暖かくて……

「もう、絶対こんな目には合わせない」

 声を押し殺すように言った彼の言葉に、震えていた体が治まっていた。


 
 まもなくして、女医さんが入ってきた。

「ケガは無いわ。でも、今日は、ここでゆっくり休んで行きなさい。ここは安心だから」

 医者に言われた通り、一泊入院する事にした。

 会社にも連絡をしてくれたらしく、部長も心配して駆けつけてきた。警察の話によると、あの男はその場で捕まったらしい。

 
 綾乃が、真っ青な顔をして、着替えを持ってきてくれた。でも、時川さんの姿を見ると、ほっとしたように、帰ってしまった。


「いくら近道でも、あんなところを通る奴がいるか?」

 彼の声は優しいが、目は怒っている?

「まさか、こんな事になるなんて……。 今まで、一度も怖い事なんて無かったし……」

「そんなに、何度もあってたまるか。頼むから、もう少し危機感を持ってくれよ」

 彼は眉間に皺をよせ、呆れたように私を見た。


 でも、何故、彼が銀行に居たのだろう? しかも、何故、あんな場所まで助けに来てくれたのだろう?

 聞きたい事は、たくさんあるのだが……

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