green mist      ~あなただから~
 はあ……
 思わずため息が漏れた。

 すると、目の前にペットボトルの水と、見覚えのある車のカギが差し出された。慌てて立ち上がって、深く頭を下げた。

「助けて頂き、ありがございました」


「いえいえ。そんなに頭を下げなくても…… とりあえず、これ飲んで下さい」


 差し出された、鍵とペットボトルを躊躇しながらも受け取った。

「すみません……」


「座りましょう……」

 彼がベンチに座ったので、私も腰を下ろした。

 ペットボトルの蓋を開けて、ごくりと飲む彼の姿を見て、私も手に持ったペットボトルの蓋を開けた。小さく彼に、頭を下げ口に運んだ。冷たい水が喉に通ると、気持ちが落ち着いてくるのが分かった。一口のつもりが、とまらない。思っていたより喉が渇いていたらしい。気が付けば、半分以上飲んでしまっていた。

 はあっー 美味しい……


「少しは、落ち着きましたか?」

 やわらかな声が、頭の上に降ってくるようだった。


「あっ…… はい、ありがとうございます」


「怖かったでしょ? あなたは悪くないですからね。ただ、車に貼ってある会社の名前を見ていると思います。一応、今日の事は会社の方へも報告しておいてください。何かあれば、僕が説明しますので連絡してください」

 彼は、ポケットから名刺を取り出した。当たり前だが、さっきの男に渡した物と同じだ。

「弁護士さん?……」

「ええ。こちらの銀行の、顧問弁護士をしています」

「そうだったんですか。お忙しいところを申し訳ありませんでした」

 きっと忙しいだろうに、こんなところで時間をとらせては申し訳ない。

「いいえ。僕もちょうど一休憩したいと思っていたところなので……」

 気を使って言ってくれているのだと思う。
 早く足ち上がらなければと思うが、まだ、力が入らない。

「あの…… 私は、もう少し休んだら、会社に戻りますので。お礼に、改めて伺います」

「お礼は、結構ですよ。でも…… 以前にもこういう事があったりしましたか?」

「えっ」

 驚いて、彼の顔をマジマジと見てしまった。何故、分かったのだろうか?
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