green mist      ~あなただから~
「ああ、ねえちゃん!」

ドアホーンを鳴らすと、飛び跳ねながら良介が出てきた。

「良介くん、心配かけちゃってごめんね」

「何言ってんだよ。ねえちゃんが悪いわけじゃないだろ。早く入って。パパ、ママ、ねえちゃん来たよ!」

 俺も居るんだけど……


「これ、気持ちばかりですが……」

 彼女は、子供の好きそうなケーキが詰まった箱を差し出した。少し、遠くの店まで買いに行ったらしい。
 
「そんな。大変だったのに、お礼なんて」

 良介の母は、申し訳なさそうに受けとった。


「ねえちゃん、座ってよ」

 良介が、ソファーへ促す。

「それじゃあ、少しだけ」

 遠慮がちに彼女と並んでソファーに座った。


「ママ、コーヒーにして、ブラックでね」

「そんな、お構いなく」

「はいはい。分かってますよ。お二人が来るとわかってから、ずっとブラックのコーヒー用意して欲しいと、とっても楽しみにていたんです」

 良介の母が、コーヒーとケーキを運んできた。

「そうだったのね」

 彼女は、嬉しそうな笑顔を良介に向けた。


「お待たせして、すみません」

 良介の父が入ってきて、ソファーに座る。IT関係の仕事をしていると聞いていたが、俺と変わらない年齢じゃないだろうか。


「いただきます」

 良介が、オレンジジュースのストローを口に入れた。

「なあ、良介、どうしてそこに座っているんだ?」

 向かいに座る父が言った。
 良介は、彼女と俺の間に、当たり前のように座っていた。

「いつもと同じだよ」

「すみません。変わった子で」

 母が、すまなそうに言う。


「実は、私達も、お二人にお礼を言いたかったのです」

 父親が、姿勢を正して言った。

「えっ?」
「えっ?」

 彼女と俺は、同時に顔を上げた。
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