green mist      ~あなただから~
 「えー。ありがとう。そんな事言われたのは初めてよ。嬉しいな。でも、その頃には、私はおばさんだよ」

 おい、子供相手に、なに喜んでいるんだよ。

「おお。良介。パパもこのお姉さんなら、大歓迎だ」

 親父まで、なにを言ってるんだ。この親子、おかしいだろ。


「まあ、パパまで。ごめんなさいね。こんな素敵な、彼氏さんがいらっしゃるのに」

 そうだよ、ママ。彼氏なんて言われると、胸がそわそわする。

「違うよ。おじさんは彼氏じゃない!」

 良介が、俺を上目遣いに見た。


「こら、良介。そんな目で見たら失礼だろ」

「はーい。ねえちゃん、このケーキ、すごーく美味しい」

 良介は、ニコリと彼女を見た。


「本当? 喜んでもらえて嬉しいな。本当に今回は、良介君に助けられたもの」

「当たり前だよ。ねえちゃんの事は、僕が守からね」


 ほー。ああ、確かにお前のお陰だよ。だけど、助けたのは俺だからな。

 良介をチラリと睨む。


「姉ちゃん。仕事にはいつ戻るの?」

「来週から仕事に戻るつもりよ。また、銀行に寄ってね」

「うん」

「すみません。お邪魔じゃないですか? こんな調子なもので……」

 母親が心配そうに、彼女の方を見た。

「いえいえ。私も楽しみにしているんです」




「ねえちゃん、もう帰るの?」

 今にも泣き出しそうな良介が、玄関で彼女の手を離さない。


「いやー。僕も残念です。良介が楽しみにしていたのが分かります」

 良介の横で、似たような顔でニヤニヤしながら父親が言った。親子そろって、彼女にメロメロじゃないか。そろそろ本気で、おいとましたい。

「あなた」

 その横で、少し睨んで母親が立っている。


「おじゃましまたした」

 彼女が頭を下げた。
 彼女の横で俺も頭を下げ、さりげなく彼女の腰に手をまわした。この親子が気付くように。

「うっー」

 良介の唸り声が聞こえたが、知るもんか。

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