green mist      ~あなただから~
「そんなに、緊張しなくても大丈夫だよ」

「なんか、色々な事が急展開で、頭が追い付いて行かないっていうか? こんな素敵な部屋も、男の人の部屋っていうかも初めてで…… ちょっと……」

「えっ? そうかぁ、初めてなんだ」

 彼が少しだけ目じりをさげ、アイスの乗ったスプーンを口に入れた。


「そうですよ。でも、時川さんは、慣れてらっしゃいますよね」

 聞きたいわけじゃないのに、口から出てしまった。

「プッ!」

 彼の口から、アイスが吹き出そうになって、慌ててテッシュで口を拭っている。


「そんな人聞きの悪い。僕だって、そんなに簡単に女性を部屋になんて入れませんよ。それに、この部屋は誰も入った事がないよ」

「誰も?」

 疑っている訳ではないのだが……


「まあね。部屋に友達呼ぶとか、そういう時間もないのが正直なところ」

「お忙しいんですね」


「ああ。でも、誤解しないで、君に会う時間はあるから」

「あっ……」

 そんな事言われたら、なんと答えていいかわからない。アイスクリームを口に運ぶ速度が速まってしまう。


「あのさ…… ずっと気になっていた事があるんだけど、聞いていい?」

「はい。何でしょうか?」

 何だろう?


「この前、映画を見に言っただろ? 僕は、とっても楽しかったと思ったんだけど……」

「はい。私も楽しかったです」

「でも、途中から様子がおかしかったよね? 僕が気にさわる事をしたのなら、はっきりと言って欲しい。小さな違和感が積み重なるのは嫌だからね」


「ヒェッ!」

 思わず変な声が出てしまった。彼があの時の事を気にしているなんて思ってもいなかった。


「やっぱり…… 僕は何をしたんだ?」
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