green mist ~あなただから~
「今週の土曜日、夕飯食べに行こう?」
夜十時。まだ、事務所のデスクで、スマホを手にしていた。
「本当に? 楽しみにしています」
彼女の、軽やかな声が聞こえる。それだけで、ほっとする。土曜日なら、なんとかこの案件のめども立つと思っていた。
土曜の夜、彼女と約束したのは七時。明日は日曜日、ゆっくり食事してなんて思っていたのだが、息を切らして居酒屋のドアを開けた時には八時を過ぎていた。それだけならいいが、また仕事に戻らなければならない事態だ。
香音を待たせてしまった事に罪悪感でいっぱいになる。
「ごめん、遅くなった……」
個室のドアを開けた。
「ううん。お疲れです」
彼女の笑顔が嬉しそうに俺を見た。俺も頬が緩むほど嬉しくなるが、同時にこの笑顔に甘えてはいけない気がした。
「先に食べていれば良かったのに」
テーブルには、まだ、何も置かれていなかった。店主が気を利かしたのか、暖かいお茶が用意されていた。
俺も彼女の向いに座り、彼女が広げていたメニューを見る。
「食べたいものがあって、もう、頼んじゃいました。時川さんが来たら、用意してくださいってお願いしてあるんです」
「そうか、ありがとう」
「お忙しかったんじゃないのですか? 無理しないで下さい」
「まあね。でも、無理してでも会いたかったから」
そういうと、彼女の頬がほのかに赤くなり、うつむいてしまった。
「なんて答えればいいか……」
もごもごと言っている彼女がなんだか可愛い。俺だって、もっとゆっくり彼女との時間を過ごしたいが、今は、抱えている案件に対して、弁護士が足りていないのが現状だ。
「うん。実は…… まだ、仕事が残っているんだ」
「えっ? そうなんですか……」
彼女の顔が少し曇った。こんな状況が続いてはダメだ。
「ああ。だから、この後、うちに来ないか?」
彼女が少し驚いた顔を上げた。
夜十時。まだ、事務所のデスクで、スマホを手にしていた。
「本当に? 楽しみにしています」
彼女の、軽やかな声が聞こえる。それだけで、ほっとする。土曜日なら、なんとかこの案件のめども立つと思っていた。
土曜の夜、彼女と約束したのは七時。明日は日曜日、ゆっくり食事してなんて思っていたのだが、息を切らして居酒屋のドアを開けた時には八時を過ぎていた。それだけならいいが、また仕事に戻らなければならない事態だ。
香音を待たせてしまった事に罪悪感でいっぱいになる。
「ごめん、遅くなった……」
個室のドアを開けた。
「ううん。お疲れです」
彼女の笑顔が嬉しそうに俺を見た。俺も頬が緩むほど嬉しくなるが、同時にこの笑顔に甘えてはいけない気がした。
「先に食べていれば良かったのに」
テーブルには、まだ、何も置かれていなかった。店主が気を利かしたのか、暖かいお茶が用意されていた。
俺も彼女の向いに座り、彼女が広げていたメニューを見る。
「食べたいものがあって、もう、頼んじゃいました。時川さんが来たら、用意してくださいってお願いしてあるんです」
「そうか、ありがとう」
「お忙しかったんじゃないのですか? 無理しないで下さい」
「まあね。でも、無理してでも会いたかったから」
そういうと、彼女の頬がほのかに赤くなり、うつむいてしまった。
「なんて答えればいいか……」
もごもごと言っている彼女がなんだか可愛い。俺だって、もっとゆっくり彼女との時間を過ごしたいが、今は、抱えている案件に対して、弁護士が足りていないのが現状だ。
「うん。実は…… まだ、仕事が残っているんだ」
「えっ? そうなんですか……」
彼女の顔が少し曇った。こんな状況が続いてはダメだ。
「ああ。だから、この後、うちに来ないか?」
彼女が少し驚いた顔を上げた。