green mist      ~あなただから~
 ~真央~

 ファイルを整え、鞄を開けると、茶封筒が目に入った。しまった……
 窓口で手続きをしなければならない書類がある事を思い出した。腕時計を見ると、まもなく銀行の窓口がしまる時間だ。

 会議室を出ると、そのままフロワーのある扉を開けて、大学の後輩の後ろ姿を探した。

「おい、金田」

 スーツ姿の男が振り向いた。

「先輩、こんなところから顔出さないで下さいよ」

「悪いな。窓口閉まると思って、これ頼むよ」

「はいはい。ちょっと待っていてください。そうだ、これ見てください」


 金田に手招きされフロワーに入る。外部の人間が入る事は勿論禁止されているが、顧問弁護士という事で、大目に見てはもらっているが……

 金田の開くパソコンの画面を見ると、今抱えている銀行の問題が、ネットニュースの隅に載っていた。世間が気にするような問題ではないはずだが、今の時代、何が引き金になるかわからない。

 小さくため息をついて、顔をあげた。
 ロビーのソファーの横においてある緑色の葉っぱに霧が吹きかかっているのが目に入った。窓からの光が反射して、きらきらと光っている。
そして…… その横に立つ女性が、振り向いた。

 えっ?

 なんだ、このオーラは?

 緑のキラキラが、まるで彼女のオーラのようにあたり一面を包んでいる。と、俺には見えた。

 なんだか目が離せず、そのまま彼女を目で追っていた。ポケットから、受付番号表を確認し、窓口に近づいてくる。にこりと微笑んだ彼女の顔に、膝からガクンと力が抜けるかと思った。

 カウンターの前に立ち、顔を上げた彼女と、目が合いそうになり慌ててパソコンの画面に目を向けた。


 今の感覚は、なんだったんだ……
  
 疲れているのか?
 幻覚か?
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