green mist      ~あなただから~
 ~真央~

 一日休めば体調はかなり回復した。多分、香音に甘えたくて倒れたのかもしれないと思うと勝手ににやけてしまう。確かに、香音はまだ若くて子供っぽいところもあるが、芯はしっかりしていて賢いところも多い。もちろん、俺が守らなければと思う事も多々あるが……

 退院して、次の日には仕事に戻っていた。香音に怒らそうだから、早めに切り上げる事にはしたが……

「おい、この案件はこのまま俺が引き継いでいいか?」

 ノックもせずに入って来た矢沢が、机の上に資料を置いた。


「ああ。頼むよ。それと、新しい案件も依頼があった」

「分かった。それにしても、この事務所は、受ける仕事の枠ってものがないのか? おばさんとおじさんの案件とじゃ、かなり方向性が違うだろ? これじゃ、なんでも屋だな。しかも、この二人が代表なんて、いくら人手があっても足りないぞ」

「ああ…… なんとかしてくれ。その為にお前を呼んだんだから……」


「マジか…… 分かってりゃ来なかったのに……  それより、水野ちゃんは大丈夫か? おばさんのあの様子じゃ、何かやるんじゃないか?」


「ああ。もうすでに香音に、別れろ、って言ったらしい…… 全く……」

「なあ、水野ちゃんと結婚しちまった方がいいんじゃねえ。お前の、あんな嬉しそうな表情始めてみたよ」

 矢沢が、何かを思い出して笑いを堪えるように言った。その顔に、苛立ちを感じるが、言ってる事は間違いでもない。


「俺だって、今日にでも結婚したいよ。こんな気持ちになった事なんてない。だけど…… まだ、香音は若い…… 俺が縛り付けるわけにはいかんよ。やりたい事だって、まだまだあるだろうし……」


「ふ~ん。でも、それはお前が思っているだけだろ? 人の価値っていうのはそれぞれだからな。お前の結婚の意思は、きちんと伝えた方がいいんじゃないか? その上で、決めるのは水野ちゃんなんだから。勝手に判断するなよ」

 
 母が騒ぎだしている事もあるし、彼女に、将来の具体的な気持ちを、伝える時なのかもしれない。

 大事なのは、俺たちの気持ちが揺るがない事だ。彼女にとって、重荷にならなきゃいいのだが……
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