結婚契約書に延長の条文はありませんが~御曹司は契約妻を引き留めたい~
その後、叔父夫婦と篝光太郎夫妻、そして篝と香津美で形式的な会食が行われた。
場所はホテルのレストランの個室。創作中華の料理がテーブルに並べられていた。
花純は年寄りと食事なんて気が滅入ると言ってこなかった。
「本当に私どもで何の用意もしなくてよろしいのですか?」
叔母は香津美の嫁入りに際して本当に一銭も出す気は無いらしい。その考えが透けて見え香津美は恥ずかしい思いをした。
「ええ、今は昔のように結納だの持参金だのということは言いません。和海の家もある程度ものは揃っていますし、いくつか家具などを買い換えるだけで、余計なお金は使う必要はありませんわ」
美幸がそう言うと、叔父夫婦はしたり顔で頷き合った。
「でも、Kagariホールディングスの御曹司との結婚ともなれば、式や披露宴もそれなりに盛大なものが求められると思いますが」
「それも昨今の景気を鑑みれば、贅沢は返って顰蹙を買います。もちろん冠婚葬祭にお金を掛け、零細企業を潤すということも大事でしょうか、当の本人達が望んでいませんから」
盛大な式や披露宴を挙げて、三年後に離婚したとなればご祝儀をくれた相手に申し訳ない。
なのでそういうことはしないで置こうということになった。
「でも、香津美さんの花嫁姿は見たいので、写真だけでも撮ろうと思っています」
不意に篝が言い、香津美は耳を疑った。何ですって? と問い詰めたいのをぐっと堪え「え?」とだけ言って、テーブルの下で彼の膝を蹴り飛ばした。
「・・・・!!」
ぐっとうめき声を堪え、ちらりと香津美を見る篝の目は、やったなと言っているのがわかる。
しかしすぐに顔つきを変え、誰が見ても妻になる女性にメロメロだという表情を見せる。
主演男優賞をもらえるのじゃ無いかしら。香津美は彼の演技力に心の中で賞賛を送ったが、それを香津美にも求められても困る。
「まあ、それはいいわね。じゃあ、白無垢に色打ち掛け、純白のウエディングドレスと色ドレス、最低四着は着ないとね」
「え、あ、あの篝さん・・」
「そうだわ、私の友人で最近お孫さんがそういうところで写真を撮ったと言っていたわ。彼女に聞いてみるわ」
「そうしなさい。来瀬さん、ちょっと構わないか」
「はい、え、ええ」
「おばあ様、お金はいくらかかっても構いません。私が出します」
篝もそれに意気揚々と参加する。
「あ、もしもし藤子さん? お久しぶりです篝です。今、お時間よろしい? この前お孫さんがね・・」
話をしながら美幸は部屋を出て行く。
篝夫婦と篝はすっかり乗り気になり、香津美と叔父夫婦だけが置いて行かれた感じだった。
『あ、あの・・篝さん』
篝のシャツを引っ張り、自分の方に注意を向けさせる。
「どうした?香津美」
香津美の焦りをまったく意に介さない様子で、しれっとした顔で聞いてくる。
「『どうした』ではありません。写真なんて・・・」
形に残るものは出来るだけ残したくない。思い合って結ばれるなら結婚情報誌を買いあさり、色々と結婚というものについて夢を抱き思い描くだろうが、二人の関係はそうでないのは篝が一番良くわかっている。それを祖父母と一緒になって・・というか、焚きつけたのは彼だ。
「そう言えば、お前達、指輪は? 最低でも結婚指輪は必要だろう」
「ゆ、指輪?」
新たな刺客の登場に香津美は瞠目する。婚約指輪や結婚指輪のことなど考えていなかった。
「それなら今度二人で見に行くことになっています」
え? またもや香津美は篝を見た。もうどう収拾したらいいかわからない。
もともとアクセサリーは好きでは無く、付けたり外したりをして無くしてしまいそうになる。
結婚指輪とか、同僚がたまに洗い場などに忘れたり、間違って流しそうになったのを聞いて、自分もそうしそうな予感がする。
「もちろんKagariホールディングスの系列店で買いますけど」
「そうか、できるだけ良い物を選びなさい」
「わかっています」
そこへ美幸が電話の通話口を押さえながら戻ってきた。
「あなたたち来週の週末はどう? 先に衣装を選んで、撮影は九月二十三日の祝日ならちょうどキャンセルがあって撮影できるって」
「私はいいですよ」
携帯のスケジュールを見て篝が答える。
「香津美さんは?」
「大丈夫です」
話の流れで断るなど出来るわけが無い。
「楽しみだね」
篝の笑顔を見て、もう一度膝に蹴りを入れようとしたが、彼も馬鹿では無い。長い足が伸びてきて香津美の足を挟み込んだ。
場所はホテルのレストランの個室。創作中華の料理がテーブルに並べられていた。
花純は年寄りと食事なんて気が滅入ると言ってこなかった。
「本当に私どもで何の用意もしなくてよろしいのですか?」
叔母は香津美の嫁入りに際して本当に一銭も出す気は無いらしい。その考えが透けて見え香津美は恥ずかしい思いをした。
「ええ、今は昔のように結納だの持参金だのということは言いません。和海の家もある程度ものは揃っていますし、いくつか家具などを買い換えるだけで、余計なお金は使う必要はありませんわ」
美幸がそう言うと、叔父夫婦はしたり顔で頷き合った。
「でも、Kagariホールディングスの御曹司との結婚ともなれば、式や披露宴もそれなりに盛大なものが求められると思いますが」
「それも昨今の景気を鑑みれば、贅沢は返って顰蹙を買います。もちろん冠婚葬祭にお金を掛け、零細企業を潤すということも大事でしょうか、当の本人達が望んでいませんから」
盛大な式や披露宴を挙げて、三年後に離婚したとなればご祝儀をくれた相手に申し訳ない。
なのでそういうことはしないで置こうということになった。
「でも、香津美さんの花嫁姿は見たいので、写真だけでも撮ろうと思っています」
不意に篝が言い、香津美は耳を疑った。何ですって? と問い詰めたいのをぐっと堪え「え?」とだけ言って、テーブルの下で彼の膝を蹴り飛ばした。
「・・・・!!」
ぐっとうめき声を堪え、ちらりと香津美を見る篝の目は、やったなと言っているのがわかる。
しかしすぐに顔つきを変え、誰が見ても妻になる女性にメロメロだという表情を見せる。
主演男優賞をもらえるのじゃ無いかしら。香津美は彼の演技力に心の中で賞賛を送ったが、それを香津美にも求められても困る。
「まあ、それはいいわね。じゃあ、白無垢に色打ち掛け、純白のウエディングドレスと色ドレス、最低四着は着ないとね」
「え、あ、あの篝さん・・」
「そうだわ、私の友人で最近お孫さんがそういうところで写真を撮ったと言っていたわ。彼女に聞いてみるわ」
「そうしなさい。来瀬さん、ちょっと構わないか」
「はい、え、ええ」
「おばあ様、お金はいくらかかっても構いません。私が出します」
篝もそれに意気揚々と参加する。
「あ、もしもし藤子さん? お久しぶりです篝です。今、お時間よろしい? この前お孫さんがね・・」
話をしながら美幸は部屋を出て行く。
篝夫婦と篝はすっかり乗り気になり、香津美と叔父夫婦だけが置いて行かれた感じだった。
『あ、あの・・篝さん』
篝のシャツを引っ張り、自分の方に注意を向けさせる。
「どうした?香津美」
香津美の焦りをまったく意に介さない様子で、しれっとした顔で聞いてくる。
「『どうした』ではありません。写真なんて・・・」
形に残るものは出来るだけ残したくない。思い合って結ばれるなら結婚情報誌を買いあさり、色々と結婚というものについて夢を抱き思い描くだろうが、二人の関係はそうでないのは篝が一番良くわかっている。それを祖父母と一緒になって・・というか、焚きつけたのは彼だ。
「そう言えば、お前達、指輪は? 最低でも結婚指輪は必要だろう」
「ゆ、指輪?」
新たな刺客の登場に香津美は瞠目する。婚約指輪や結婚指輪のことなど考えていなかった。
「それなら今度二人で見に行くことになっています」
え? またもや香津美は篝を見た。もうどう収拾したらいいかわからない。
もともとアクセサリーは好きでは無く、付けたり外したりをして無くしてしまいそうになる。
結婚指輪とか、同僚がたまに洗い場などに忘れたり、間違って流しそうになったのを聞いて、自分もそうしそうな予感がする。
「もちろんKagariホールディングスの系列店で買いますけど」
「そうか、できるだけ良い物を選びなさい」
「わかっています」
そこへ美幸が電話の通話口を押さえながら戻ってきた。
「あなたたち来週の週末はどう? 先に衣装を選んで、撮影は九月二十三日の祝日ならちょうどキャンセルがあって撮影できるって」
「私はいいですよ」
携帯のスケジュールを見て篝が答える。
「香津美さんは?」
「大丈夫です」
話の流れで断るなど出来るわけが無い。
「楽しみだね」
篝の笑顔を見て、もう一度膝に蹴りを入れようとしたが、彼も馬鹿では無い。長い足が伸びてきて香津美の足を挟み込んだ。