甘い災厄
「え、ちょっ、どした?」
「やだ……」
そうか。
だから、ぼくは。
関係なんていらないと、思った。
「言えない……」
いなくなるくらいなら。関係なんかいらない。
だから。
「え、なに、泣いてるの?」
まつりにしがみつく。
苦しい。
「怖い」
「もー、よしよし。なかないの」
「みんな好き」
「はいはい」
「まつりも好き」
「うん」
「一番って、どうやって決めるの?」
「行かないで欲しいんでしょ? 植物や猫さんには、思った?」
「いつかまた会える、って思った」
「うん。それが、優先ってことだよ」
「優先なんてあるの?」
驚く。知らなかった。好きは、みんな、同じだと思っていた。違うのか。
「あるでしょう、きみの両親も、きみと仕事どちらを優先するかって」
「仕事に恋をしていた?」
「んー、そうだなぁ……でも、お金がなきゃ生きられないし、なんというかね。あー、この話題やめよ、ごめんごめん」
「難しいよ」
まつりの部屋で、少女漫画とかを見つけたことがある。
読んでみるかと言われていくらかを読んだけれど、そのときのぼくには内容が難しくて、なかなか読めなかった。
「まつり以外と、同じ部屋で寝泊まりできる?」
「怖い、けど……必要性があれば」
できなくもない。
できなくもないことを、無理と言うのは誠実じゃないだろう。
「あー、できるとか聞いたからか、ごめん。必要性の話じゃないの、感情!」
「いい人だったら、まあ」
「いや、そうだけどね!だから、条件とか無くて、誰か一人選んで相部屋ってなったら」
「……まつりとか、コウカさんとかがいい」
「お。ちょっと近づいた」
「でも、案外、それ以外でも、話をしたらいいひとかもしれないし……」
「戻ったぁ!」
好き嫌いではない、目の前に、やるべきことがあるなら、考えず取り掛かれ――と。
そう言われてきた。どうしてもと言われた場合を考える癖が付いてしまっている。うーん。
「難しい?」
まつりがぼくを抱き締めたまま聞いてくる。
「難しい」
俯く。
「それじゃ、これは?」
す、と首筋をなぞられる。そこは微妙にひりひりする。まつりが何度も吸ったりしたからだ。全く……
「こ、れ?」
あきれていて、質問の答えを考えてなかった。
「昨日、ベッドの中で」
ささやかれて、かあっと赤くなる。
「あれも、誰とも?」
首を横に振る。
「誰ともしたくない」
「そっちか」
「でも……まつりは、特別だから……」
「うん」