このキョーダイ、じつはワケありでして。
「そんな…、そんなレベルじゃないんだよ…」
「えー?なにー?てかさ、この髪だってお金ないから美容院にすら行けないんでしょ?かっわいそー!だったら切ってあげよっか?」
「っ、」
シスコンなんてレベルじゃない。
あのひとは神様だ。
1度も私を責めることはしなかった。
おまえが空手の大会に連れていったから両親は───なんて、言われもしなかった。
彼は昔から母親によく懐いていたと思う。
お父さんよりお母さんに心を開くタイプだったみたいで、ちゃらんぽらんしてグレていた当時も母親の手料理を食べたいとぼやいていたくらいだった。
「うそっ、泣いちゃったんだけど!!まじウケるーー!」
「みんなの邪魔してごめんなさいって謝るなら許してあげてもいーよ?これ以上調子に乗りませんって、ほら言えよさっさと!!」
ごめん兄ちゃん。
ごめんなさい、お兄ちゃん。
嘘ついた。
私、ずっとずっと嘘ついてた。
事故当時の記憶はないって、あれ嘘なの。
本当は覚えている。
ぜんぶ、覚えてるんだよ私。