このキョーダイ、じつはワケありでして。
どうしてそこまで優しい顔をして、愛情いっぱいの眼差しで、まるで本当の母親みたいな顔をして、どうして私を守ってくれるのって。
その表情が、私を見つめる兄とそっくりだったから。
────ごめんなさいって、ずっとずっと謝りたかった。
「髪…なんかっ、いらないから…っ、お母さんを…っ、兄ちゃんのためにお母さん返してよぉぉ……っ」
先輩、意味ないよこんなの。
願掛け?
最初から無駄なことが分かっている願掛けなんて、なんの意味があるっていうの。
会えないよ、もう死んじゃったんだから。
こんなことしたって会えないんだよもう。
「ああああ……っ、うぁぁぁーーー…っ」
「ね、ねえ…どうする?なんか泣き出したし、これ誰かに見つかったら完全にあたしらって悪者じゃない…?」
「っ、もう行こっ!!」
顔に投げられて地面に落ちた胴着。
“四宮 慶音”と刺繍の入った私の宝物は、純白をしていたとは思えないくらいの色に変わっていた。