このキョーダイ、じつはワケありでして。
「お、きたきた。待ってたよ慶音」
滅多に行かない3年クラスが並ぶ棟。
高校は中学よりも先輩後輩の溝が深く、不気味なものにレベルが上がっている。
たとえ部活でお世話になっていたとしても、わざわざ教室に向かうことなんか極力避けたいというのに。
「お弁当の途中だったんですけど」
「そりゃ悪いや。穴埋めはするよいつか」
テキトーばっかり言いやがる。
たどり着いた3年C組、とっくに教室内に姿を現す鬱陶しい笑顔は「こっちこっち」と手招きしてきた。
そもそも緒方 志摩だって2年のはず。
3年の教室でどーしろと。
《2分以内に3-Cに来なかったらぜんぶバラす》
あんな脅しメールをしておいて「待ってたよ」だなんて。
ふざけすぎて腹立たしさすら通り越した感情が爆発しそうだった。
………いっそ○して、しまおうか。
こら慶ちゃん。そんな危ない言葉、兄ちゃんは教えてないよ───と、脳内に架空の兄を作ってなんとか鎮(しず)める。