このキョーダイ、じつはワケありでして。
「まあシャー芯の借りもあったし。それでチャラってことにしとくよ」
「あんなの貸しにもなりません…けど」
「どんな小さなことでも借りは借り。俺たち兄妹の掟(おきて)だからこれ。それでも腑に落ちないなら、明日からも妹と仲良くしてやってよ。それで許すから」
うなずいた天瀬は私を見つめてくる。
ぎこちなさは消えて、明日からもっと今まで以上に話せるんじゃないかとお互いに感じる眼差しで。
「慶音もきみのこと、けっこー気に入ってるっぽいし?」
「……え?」
「ちょっ、ちょっと兄ちゃん…!」
なに言ってるの…!?
カアアとほとばしる全身の熱を隠したくて、つい立ち上がってしまえば。
肩から外れた氷袋ごと元に戻すかのごとく、冷静すぎる兄の過去を彷彿とさせる鋭い視線。
「つぎ動いたら無理やり眠らせるよ慶ちゃん」
「……………はい」
「よろしい」
絶 対 服 従。
お兄様、妹は大人しくします。