このキョーダイ、じつはワケありでして。




「えー、なにそのガン無視」



いいの?なんて、天瀬をチラッと見つめた男は不敵に笑ってくる。


……ほんとうに邪魔しかしない人だ。

やっぱり邪魔先輩ってあだ名はぴったりだと思う。



「ど、どうも…」


「もしかしてウワサのお兄さん?おー、慶音もよく見ると端正な顔してるし、さすがお兄さんって感じ?……でも、思ったより似てないかも」



似てない。
昔から言われてきた言葉だった。

私と兄は似ていない。

シンプルにどこがと聞けば、満場一致で顔と言われる。



「…俺は母親似で、この子は父親似だからさ」


「へえ…、そーなんですね。あ、俺は慶音ちゃんのお友達の緒方 志摩って言いまーす。はじめまして」



律儀に答えなくていいんだよ兄ちゃん。

私たち兄妹にこんな失礼なこと言ってくる奴になんか。


………似てないなんて、どうしてそんなひどいこと言うの。



< 69 / 315 >

この作品をシェア

pagetop