このキョーダイ、じつはワケありでして。
「えー、なにそのガン無視」
いいの?なんて、天瀬をチラッと見つめた男は不敵に笑ってくる。
……ほんとうに邪魔しかしない人だ。
やっぱり邪魔先輩ってあだ名はぴったりだと思う。
「ど、どうも…」
「もしかしてウワサのお兄さん?おー、慶音もよく見ると端正な顔してるし、さすがお兄さんって感じ?……でも、思ったより似てないかも」
似てない。
昔から言われてきた言葉だった。
私と兄は似ていない。
シンプルにどこがと聞けば、満場一致で顔と言われる。
「…俺は母親似で、この子は父親似だからさ」
「へえ…、そーなんですね。あ、俺は慶音ちゃんのお友達の緒方 志摩って言いまーす。はじめまして」
律儀に答えなくていいんだよ兄ちゃん。
私たち兄妹にこんな失礼なこと言ってくる奴になんか。
………似てないなんて、どうしてそんなひどいこと言うの。